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フレイルの克服に向けた研究、高齢者の口腔嚥下機能訓練

口腔嚥下機能を維持することは、誤嚥性肺炎の予防をはじめ、心身の健康を維持する上で、重要である。舌、口腔周囲筋群を使って吸飲と嚥下を行う高齢者向けのリハビリ用器具「口腔嚥下機能訓練器具」は舌圧を改善し、高齢者の嚥下機能の低下を防ぐ可能性がある。疫学調査では口腔機能低下と認知機能の低下とが関連すること、動物モデルでは口腔周囲筋活動を誘発する咀嚼野刺激が、認知機能に欠かせないマイネルト基底核を賦活し大脳皮質血流増加をもたらすことが示されている。そこで本研究では、嚥下訓練器具の使用が高齢者の舌圧と認知機能に及ぼす影響を調べることを目的とした。

「方法」同意が得られた特養施設の入居者のうち、研究期間を通して嚥下訓練を継続できた38名(女性34名、男性4名、平均年齢86歳)を対象とした。3か月の吸啜訓練(リンゴジュース30cc吸飲を1日1回、週5回)を3ヶ月の休止期間を挟んで2回行った。

舌圧測定は月一度体調を見て実施した。認知機能はCiinical Dementia Rating Sum of boxes(CDR-SR.スコアが高いほど重症)を用いて各訓練後に評価した。

「結果」訓練実施前の舌圧は13.4±11.7kpaであったが、訓練3ヶ月目には、1回目21.7±11.6kpa.2回目22.8kpa±11.1kpaと有意に上昇した。1回目と2回目の間に有意差はなかった。CDR-SBは、1回目8.6±4.6から2回目7.9±4.7に、6ヶ月間で0.7ポイント有意に低下した。

「結論·考察」「嚥下訓練器具」の使用によって上昇した舌圧は、3ヶ月の休止期間を挟んでも訓練再開により、高い状態で維持された。訓練の継続によつて認知機能がわずかながら改善したことは、高齢者の嚥下機能と認知機能との密接な関係を裏付け、吸啜訓練の有用性を示唆する。