食べ物を口に入れて飲み込む直前までに、口の中でどんなことが起こっているか確認しましよう。菊谷武著、あなたの老いは舌からはじまる より
①食べ物を口に入れ、様々な情報を感知する。
私たちは通常、食べ物を口でパクリととらえて、口の中に取り込みます。この瞬間、口腔内ではさまざまな情報を感知し、脳に送り込んでいます。甘い、しょっぱいなどの味、熱い、冷たいなどの温度、さらに硬いか柔らかいか、みずみずしいかパサパサしているかといった食べ物の物性まで、瞬時に感知しているのです。
②食べ物の状態を判断し、咀嚼の準備をする。
食べ物の状態をを感知したら、次はどう処理するかです。例えばヨーグルトやプリンなら噛まずにすむ、肉や豆などはしっかり噛まなければならないなど、食べ物の物性から処理方法を判断するのです。そして噛まなければいけないと判断したら、舌が食べ物を奥歯のうえにのせます。口腔内の感覚や過去の経験などから、適切な処理方法を瞬時に識別しているのです。
③食べ物を噛み砕く
噛むことが必要な食べ物だと判断したら、舌や唇、頬、あごなどを巧みに動かしながら、上下の奥歯で噛みます。食べ物を右の奥歯に持っていったり、左の奥歯に持っていったりしながら口の中で取り回し、飲み込みやすい大きさになるまで、噛み砕いていきます。豆腐やプリンなどの柔らかい食品は、舌を口蓋(上あご)に押し当ててつぶします。
④飲み込む準備をする
十分に咀嚼したら、食べ物を舌の上にまとめて、飲み込む準備をします。
⑤舌を使って食べ物を飲み込む
十分に咀嚼された食べ物を、舌を使ってのどに送り込みます。そしてのどを強い力で絞り込み、食べ物を食道の中に送り込みます。(飲み込み) 実はのどの前の壁は舌でできていて、のどを絞り込むのに大きな役割を担っています。
①~⑤はふだん私たちが何げなく行っている「食べる」という行為です。これがいかに複雑かつ緻密な動きであるかということがわかると思います。
そしてこの一連の動きの中で、大きなカギを握っている器官が舌なのです。
食べ物を噛むために、当然歯はあったほうがよさそうですが、舌は歯よりも重要な役割を果たしているのです。
・食べ物を口に入れるとき、迎えにいって口の中に取り込む。
・味や温度、物性を感知する。
・食べ物を巧みに取り回し、咀嚼をサポートする。
・噛み終わった食べ物をまとめる。
・のどに送り込んで飲み込む。
これらの動きの中心は、舌です。舌がしっかり働いてくれているからこそ、私たちは食べ物を噛み、飲み込むことが出来るのです。
おいしく食事ができるのは、舌の働きがあってこそ、なのです。
私の机上には菊谷武先生の著書があります。このお考えが広く知られて誤嚥性肺炎患者が少しでも減ることを願っております。