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私の尊敬する先生(菊谷武先生の著書)「あなたの老いは舌から始まる」のはじめにの部分のご紹介「歯が残っていても嚙めない」という現実

「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」を提唱する8020(ハチマルニイマル)運動などのおかげか、多くの日本人がきちんと歯みがきをするようになりました。口腔ケアという概念も浸透しつつあります。

その結果、高齢になっても自分の歯をたくさん残せる人が増えています。高齢者=歯がないというイメージは、もはや昔のものです。

しかし、介護施設などの高齢者の介護の現場では、実は深刻な問題が起きているのです。それは「歯があっても食べられない」「歯があっても嚙めない」という現実です。いったいなぜでしょうか?

「あなたの口の中は、健康ですか?」

こう聞かれたら、次のように答える人が多いのでではないでしょうか?

「歯みがきはきちんとしているし、虫歯もないから大丈夫」「虫歯はあるかもしれないけど、痛みがないから放置している」「歯周病が気になるけれど、忙しくて歯医者に行けてない」このように、口の中についてたずねると、多くの人は「歯」について答えます。

一般的なイメージでは、口の健康=歯なのです。

もちろん、歯の健康はとても大切です。しかし、「食べること」「噛むこと」といった口の機能は、歯だけで行われるわけではありません。

私たちが生きるために必要な「食べる」「噛む」「飲む」といった動作は、舌、頬(頬筋)、下あごなど、さまざまな部位がタイミングよく連動しながら働くことで、行われているのです。つまり、口の健康というのは、歯だけではなく、舌や頬(咬筋)、下あごなどの機能を総合して判断すべきものなのです。

とりわけ「舌」の動きは重要です。

それ~体感していただくために、次回の食事の際、自分の舌がどんなふうに動いているかを、ぜひ確認してみてください。きっと自分が考えていた以上に、舌が複雑な動きをしていることに、驚くことでしょう。

実際は、私たちの舌は、食べるとき、次のような働きをしています。

まず、口の中に食べ物を取り込み、固さや大きさを判断。食べ物を取り回しながら十分に噛み、飲み込みやすい形にまとめます。(=食塊形成)そして、食べ物をのどに送るときは、舌を口蓋(上あご)につけて口腔内の圧を高め、咽頭へ送ります。さらに、舌根(舌の奥のほう)を使って食べ物を一気に食道へ送り込みます。

どうでしょう。舌は大変な働きをしていると思いませんか。

健康で幸せに生きるために必要な「食べること」「噛むこと」は、舌が大きな役割を果たしています。舌の機能が弱ってしまうと、いくら歯が健康であっても、食べたり、噛んだりすることが難しくなります。つまり、歯が20本残っていても、うまく食べられない、嚙めないという現実に直面する可能性は、十分にあるのです。

「食べる」「噛む」という、生きるための機能を存続させるためには、歯の健康だけではなく、舌をはじめ、口の機能をトータルで考えなければならないのです。

多くの人が希望する「ピンピンコロリ」で生をまっとうすることは、一割の人しか叶いません。しかし、舌を、口の中をケアすることにより、充実した、豊かな老後は送れます。

菊谷武先生は、この本がその一助になれば、著者としてこれほどうれしいことはありませんと述べられています。素晴らしい本なので、私はバイブルとして、ボロボロになるほど何度も読み返しています。皆さんもぜひ読まれてはいかがでしよう。