平均寿命と健康寿命
100年生きることは本当に幸せなことなのだろうか。大病もせず、元気に暮らしていけたなら、さらに人生を謳歌できるだろう。しかし、何も対策をしなければ、体は衰え、命を脅かす病を患うリスクもある。そうなれば苦痛とともに過ごす年月はなかなか辛いものだ。
そこで重要になってくるのが、健康寿命の考え方である。
健康寿命とは、2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した理念で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義される。
日本は世界トップクラスの長寿国。厚生労働省のデータによると2019年の平均寿命は男性81.41歳、女性は87.45歳。
ところが、健康寿命はというと、男性72.68歳、女性75.38歳で、その差が男性で約9年、女性で約12年も開きがある。
この期間は健康上の問題や要介護など何らかの支障を抱えて生活せざるを得ない状態であることを意味する。
実は“人生100年時代”を掲げる長寿国日本ならではの現実的かつ深刻な課題は、この平均寿命と健康寿命との乖離に起因するところが大きいのだ。
厚生労働省の調査によると、日本人の死因の第5位が肺炎。その内約98%を65歳以上が占めるという。
予防や治療だけではない。“未病ケア”も注目を集めている。
健康に生きることは、自分のためだけではない。家族やひいては社会の健全化にも繋がるのだ。
文春オンライン抜粋